研究概要 |
歯科用金属アレルギーで、一般の健常者で感作している割合が高く、パッチテストで擬陽性反応を起こしやすいため判定がしにくい水銀について,前年度に、感作判定のための至適水銀濃度の決定を行ない、アセトン+オリーブ油を基剤とした塩化第2水銀を1.5%濃度で用いれば良いことが判明した。実験方法は、まず、実験群のマウスの腹部に抗原を塗布し、1週間感作の誘導を試み、次にマウスの耳翼に抗原を塗布し、経時的にその厚さを計測し、未処置のマウスをコントロールとして比較し、耳翼の厚さに有意差がでたものを感作マウスとした。 今年度は、作製した感作マウスの免疫能を確認するため,感作マウスよりリンパ球を採取し、卓上小型遠心機で分離、未処置のマウスにリンパ球を移植し、耳翼に抗原を塗布、免疫能が移植されているかどうか、実験を試みた。その結果は、パーソナルコンピュータに入カ、データ記憶装置に保存し、統計計算を行ったが、腹部に抗原を塗布して感作の誘導を試みたマウスと同様に、耳翼の腫脹が観られたマウスと、腫脹しなかったマウスが観察された.そのため、感作マウスの水銀に対する免疫能が移植されているかどうか確認するに至っていない。 現在、パッチテスト試薬は本実験で使用しているような金属塩の水溶液がほとんどである。これは、金属アレルギーが金属イオンと担体蛋白が結合して抗原性を発揮するためであると考えられる.しかし、試薬を金属塩で用いると、酸に対する皮膚への影響は避けられず、金属の濃度が低くなり、擬陽性反応、擬陰性反応のどちらも起こりうる。現時点では、金属アレルギーのin vitro検査法が確立されていない。そのため、金属アレルギーの感作判定にはパッチテストしかなく、より感作判定の精度を増すため、その試薬の改良が急務であると考え、皮膚への刺激が少なく、より高濃度の金属パッチテスト試薬の開発に取り組みたい。
|