研究概要 |
これまでに,インプラント埋入後の治癒機転を加速する試みとしてパルス電磁場刺激(以下,PEMFs)の応用を試み,新生骨形成促進効果があることを報告してきが,その作用機序は未だに不明な点が多い.そこで今回は,PEMFsの骨形成促進効果のメカニズムを明らかとするために,PEMFsがヒト正常骨由来骨芽細胞様株(SV-HFO)の骨形成因子であるBMP-1〜7のmRNAの量伝子発現に与える影響をIn vitro的に検討した.実験に先立ち,SV-HFO細胞に対する最適な磁場強度を検討する目的で,磁場強度0〜0.6mTの範囲で変動させ,パルス電磁場刺激がSV-HFO細胞の細胞増殖に及ぼす影響をmitochondrial dehydrogenase活性を指標としたXTT細胞増殖assayより検討した.細胞がサブコンフルエントに達したときからPEMFsを与え,mRNAの抽出はAGPC法にて刺激開始時から1時間後から48時間後まで経時的に行った.実験の評価はreverse transcription-polymerase chain reaction(RT-PCR)法にて行い,以下の結果を得た. (1)磁場強度を0〜0.6mTまで変化させて細胞増殖を対照群と比較した結果,磁場強度が0.3mTが33%の増加を示し,変動させた磁場強度の中で最も高い増殖を示した.ついで0.4mTの29%であった.なお,以後のパルス電磁場刺激条件を磁場強度0.3mT,パルス幅25μsec,周波数100Hzとした. (2)SV-HFO細胞は無刺激条件下において,BMP-1,-2,-4,-5,-7のmRNAの発現が認められたが,BMP-3,-6についてはその発現が認められなかった. (3)無刺激条件下でBMPmRNAの発現が検出されたもののうち.パルス電磁場刺激では,6時間後から時間依存性にBMP-2,-4BMPのmRNAレベルを増加させ,6から24時間後に最も増加されており,BMP-5は6時間後のみが増加されていた.しかし,その他のBMP-1,-7のmRNAのレベルは,いずれにおいても増加は認められなかった.
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