研究概要 |
総義歯患者の顎口腔機能の老化は,加齢や歯の喪失,全身的な要因のほか,人為的関与による顎顔面形態の変化,総義歯のQualityなどさまざまな因子が複雑に絡み合って影響を受けると考えられる. 本研究では,総義歯患者を被検者とし,MRIから求めた咀嚼筋断面積と最大咬みしめ時の筋電図を分析し,一般的臨床診査項目とあわせ検討することにより,総義歯のQualityが咀嚼筋断面積と咀嚼筋機能に及ぼす影響について明らかにすることを目的とする. 本年度はまず,データの収集を行う.被検者は総義歯製作を希望して来院した無歯顎患者から,無作為に抽出し,装着義歯のQualityの評価を,Quality scoreから求める.咀嚼筋は,MRI装置(GE社製SIGNA)を用い,咬筋,側頭筋後部を撮像する.断面積の計測はMRIフイルムのトレース後,画像解析装置IBAS-2000(ZEISS社製)にて画像解析し計測する.最大咬みしめ時の咀嚼筋筋電図は,ポリグラフ(NECメディカルシステムズ社製)を用い,咬筋,側頭筋前部,ならびに後部から,表面電極にて双極導出し,記録する.筋電図データは,サーマルアレイレコーダーにて再生し,計測する. 申請したパーソナルコンピュータにて,これら各分析データの集積を行った結果,Quality scoreの低い群において,咀嚼筋断面積が有意に小さく,義歯Qualityが咀嚼筋断面積の減少に影響を及ぼしていることが示唆された.このことから次年度には他の分析項目についても引き続き検索する予定である.
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