研究概要 |
間接法により補綴物を製作する場合,咬頭嵌合位を咬合器上に正確に再現することは顎口腔系に調和した補綴物を製作する上で重要なことである.そのためには歯列模型の精度はもちろんのこと,採得される咬合記録にも高い精度が要求されてくる.本研究では,咬合記録を用いないと歯列模型上で咬頭嵌合位が不安定となる,左側下顎第一大臼歯欠損で第二小臼歯と第二小臼歯を支台歯としたブリッジ症例について,昨年度の報告で最も優れていた付加型シリコーン・ラバー印象材による咬合記録材を用いて,咬合器に装着するときの咬頭嵌合位の再現性について昨年度と同様の検討を行った.さらに咬合記録材の理工学的性質を明らかにし,咬頭嵌合位の再現性と理工学的性質との関連について検討を行った.咬頭嵌合位の再現性に影響を及ぼすと考えられる理工学的性質としてADASNo.19に準じ,材料の圧縮ひずみ,永久ひずみ,寸法変化率について測定を行った.測定に使用した付加型シリコーン,ラバー印象材による咬合記録材は,PRESIDENT JET BITE(PRE),EXABITE(EXA),Stat・BR(SBR),BITESIL(BIT),MEMOSIL(MEM),MUSHPRINT(MUS)である.その結果,歯列模型の浮き上がり量は,採得範囲が支台歯のみの場合,支台歯側である左側臼歯部のみ浮き上がり,前歯部と右側臼歯部では変化がないかあるいは低くなった.採得範囲を1/3顎まで広げると,左側臼歯部および前歯部が浮き上がり,右側臼歯部ではほとんど変化がなかった.付加型シリコーン・ラバー印象材による咬合記録材は咬頭嵌合位の再現性に優れていたが,MEMは他に比べ劣ることが示された.BITとMEMは前歯部について採得範囲の影響が大きく他の材料と異なった傾向を示した.付加型シリコーン・ラバー印象材による咬合記録材の咬頭嵌合位の再現性は,材料の永久ひずみおよび寸法変化率に影響されることが推察される.
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