Osseointegrated implantが適用された症例においては、当該部位の歯根膜の圧受容情報が欠落していると考えられるために、機能時における咬合力の調節にあたっては、筋および顎関節からの圧受容情報による補完が行なわれていると判断される。そこで、下顎に骨結合インプラントが適用された症例のインプラント施術部位に対して付与された力の識別閾値を把握し、インプラント適用部における歯根膜圧受容情報の欠落が、咬合機能に及ぼす影響を明らかにすることを試みた。 本研究においては、下顎の前歯から小臼歯までの全歯牙を被覆するスプリントの特定部位を荷重した場合に、どの程度の荷重量において下顎への被圧感覚が生じるかについておよびインプラント義歯装着者の当該部位における被圧量の識別能力についての検討を行った。 その結果、下顎のインプラント部に漸増荷重を与えると、約130gで顎に触れられた、約290gで顎が押された、さらに、約560gで顎が動かされたという被圧感覚が生じることが判明した。この数値は、下顎の前歯から小臼歯までの全歯牙を被覆したスプリントを装着し、しかも、両側オトガイ孔への伝達麻酔による歯根膜の受圧感覚をブロックした場合のそれと、同程度の荷重量による被圧感覚であることが判明した。また、下顎のインプラント部に付与した懸錘荷重による荷重量差の識別能力としては、160gの対照荷重に対する40g差を約65%の頻度で識別しうることが判明し、この数値は、スプリント支持歯に麻酔を施した状態のそれと同程度の能力であることが判明した。
|