骨結合インプラントが適用された症例においては、当該部位の歯根膜圧受容情報が欠落すると推定されるために、咬合力の調節にあたっては、筋および顎関節からの圧受容情報による補完が行なわれていると判断される。そこで、本研究においては、インプラント施術部位における中等度の硬さのゴムを用いた硬さ識別能力と筋および顎関節からの圧受容情報に基づく微小荷重の識別能力について検討を進めた。 まず、上下臼歯部がインプラント義歯によって対合する症例に対して、JIS規格による30°から70°の〃10°間隔のゴムブロックを作製し、50°に対する各硬度差の識別能力を調査した。その結果、インプラント義歯においても硬度差の識別能力は、天然歯列のそれと大差がないことが判明、しかも、天然歯列の咬合部位に麻酔を施しても硬度差の識別能力には、ほとんど変化しないことが判明した。したがって、調査対象とした硬さの範囲においては、硬さの差は、筋および顎関節からの圧受容情報により識別が可能であることが認められた。 ついで、天然歯列に対して、歯列を被覆するスプリントを装着し、このスプリントの中央を荷重し、そのときの被圧感について調査を行なった。被圧感としては、52grfで歯に触れられた、117grfで歯が押された、226grfで顎が押された、に変化したが、スプリント支持歯に麻酔を施すと、その被圧惑は124grfで顎に触れられた、272grfで顎が押された、に変化した。したがって、歯根膜圧受容情報の機能的な意義を検討するためには、100grf以下の微小荷重を対象とする必要があることが判明した。
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