顎顔面補綴治療の一環として、顔面部の実質欠損や変形に対して、エピテ-ゼを作製している。この時、エピテ-ゼ材料であるシリコーン樹脂の内部彩色を、顔面皮膚色に調和させる行程はほとんど術者の感覚に頼ったもので、相当な熟練を要するものである。そもそも、年齢、性別、顔面の部位、季節、生活環境、体調などで、人の皮膚の色調は変化するものであるから、一定色調のエピテ-ゼによりこれに追随させることは容易ではない。 本研究は、日本人の健常者および顔面部分欠損患者などの顔面皮膚色を、分光測色計にて測定し、年齢、性別、顔面の部位の観点から比較検討を加え、エピテ-ゼ作製時に必要となる基礎的資料を得ることを目的とする。そこで今回、本学歯学部学生、衛生士(男71名、女71名)を被験者とし、その顔面皮膚色4点(前額面中央部、左側眼窩部、左側頬部中央、鼻尖部)を 暗室にて非接触型の分光測色計(フォトリサーチ社製 PR-650)で測定した。光源としてキノセンランプを使用し、標準白色板による各被験者ごとの較正を行った。 国際照明委員会(CIE)にて制定され、現在最も一般的なL*a*b*表色系にて、明度(L*)、クロマティクネス指数(a*b*)および彩度(C*)を測定し、性別、部位別、の平均値を用いそれぞれにより色差(△L*ab)を求めた。それによると、顔面皮膚色4点のそれぞれと男女の色差は許容色差の分類で3級〜5級となり、色差が大きいことを認めた。
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