研究概要 |
顎破裂に隣接した上顎切歯の発生過程の解明を目的に、交付申請書に記載した備品として、顕微鏡カラーテレビ装置(Nikon社:HV-C20S)および画像再構築用コンピューター(Apple computer社:Power Mac 7600)を購入し、本研究に使用した。実験動物として口唇口蓋裂自然発生CL/Fr系マウスを用い、上顎切歯の歯胚が形態的に観察されるようになる胎齢12日〜新生仔の片側性唇裂・唇顎裂個体について標本を作製した。標本はヘマトキシリンエオジン染色したのち,新たに購入した備品を使用して三次元再構築を行い、歯胚の発生過程について二次元および三次元的に観察した。 〈研究結果および考察〉 1)歯胚発生の初期すなわち胎齢12日〜13日では正常側の歯胚は内側鼻突起と上顎突起の癒合部後端に認められた。また、破裂側の歯胚は顎破裂に分断され、正中破裂縁に位置しており、上顎突起側にも歯胚の初期形成を思わせる上皮肥厚が認められた。一方、胎齢14日以降では破裂側には歯胚の形成傾向を認めなかった。 2)胎齢14日以降では歯胚は尾側に向かい発育、伸長するが、破裂側の歯胚は吻側ではその形態形成は大きく障害されず、顎破裂により伸長方向を妨げられる尾側での形態異常が著明であった。 これらの観察結果より、マウスの上顎切歯歯胚の形態形成は主に内側鼻突起内に位置する細胞集団に由来し、歯胚形成の初期では顎破裂の存在は歯胚形成を妨げず、顎破裂の存在による発育の場の不足が歯胚の形態異常の主要因と考えられた。 以上より、顎破裂に隣接した歯胚は発生初期より顎破裂の影響を受け手おり、顎破裂の存在が歯胚の発育異常に深く関与していることが明らかとなった。
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