本研究では、1)口腔領域扁平上皮癌において、癌抑制遺伝子産物およびその関連遺伝子産物の遺伝子の変異やその発現異常の有無を検索し、総合的に検討し、2)それらの、細胞癌化における機能(将来的に、DNA複製において)について、具体的に、口腔癌を通じて解析を進めることを目的とし、研究実施計画を以下の如くたてた。 1)症例を増やして口腔扁平上皮癌の臨床材料より、mRNAを抽出する。 2)既に他臓器癌で報告されているp53やRB遺伝子変異のHotSpot領域の、5'regionと3'regionにPolymerase Chain Reaction(PCR)のためのprimerを合成する。Hot Spot領域内でのprimerの組み合わせにより、1)のmRNAを用い、Reversetranscriptase PCR(RT‐PCR)を行う。そのPCR productsを、Single Strand Conformation Polymorphism(SSCP)を用いて解析する。negative controlとして、正常なp53やRB遺伝子をtemplateとして用いる。これにより、各々の遺伝子変異が見つかれば、そのままdirect sequenceを行い、変異の種類を明らかにする。 3)p130(RB2)遺伝子については、RB遺伝子変異のHot Spotに相当する領域にprimerを合成し、2)と同様に解析する。 4)Ki‐67の発現を免疫染色し細胞の増殖活性を検討した口腔扁平上皮癌の臨床材料(パラフィン切片)において、コンセンサスPCRと特異的制限酵素によるdigestion patternを用いて、ヒトパピローマウイルスを検索する。 成果の概要: 1)30例以上の口腔扁平上皮癌臨床材料より、mRNAを抽出した。 2)p53、RB遺伝子とRBfamilyの一つであるp130(RB2)遺伝子については、変異のHotSpot領域の、5'regionと3'regionにPolymerase Chain Reaction(PCR)のためのprimerを合成し、HotSpot領域内でのprimerの組み合わせにより、1)のmRNAを用い、Reversetranscriptase PCR(RT‐PCR)を行った。 3)その結果、p53、RB遺伝子とRBfamilyの一つであるp130(RB2)遺伝子について、その発現を確認できた。各変異については、現在、SSCPにより解析中である。また、direct sequenceを行う予定である。 4)10以上の口腔扁平上皮癌臨床材料において、当科で行っている癌化学療法の効果とKi‐67の発現を指標とした細胞増殖活性とに、相関関係があることが示唆された。更に検討を加える予定である。 ヒトパピローマウイルスにいては、用いるprimerの合成を完了した。
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