研究概要 |
1)培養唾液腺細胞に対する遺伝子導入実験 コラゲナーゼ処理にてラット顎下腺細胞を単離し,マイトマイシンCにより増殖能を失わせた3T3細胞とともに平面培養を行った。培養唾液腺細胞に対しカチオニックリポソームを用いたマーカー遺伝子の導入(ルシフェラーゼ)とLacZ遺伝子をコードするレトロウイルスベクターを用いた遺伝子導入を行った。リポソーム法による遺伝子導入では導入2日後に遺伝子発現は最大となるが,約l週間後に消失する。またsubconfluentの状態では導入可能だが,conluentの状態では導入困難であった。現在遺伝子発現期間を延長させるべく検討を行っている。レトロウイルスでは培養細胞では約4週間の遺伝子発現が可能であったが,導入効率は約10%であり現在導入効率を増加させるための検討を行っている。 2)培養正常唾液腺細胞の移植に関する研究 ラット正常顎下腺細胞を3T3細胞とともに培養し,アテロコラーゲン中に浸透させた後,ヌードマウス皮下に移植した。背部の皮下は膨隆し移植翌日より内部に液体が貯留し,4週間観察可能であった。これを吸引したところ粘稠な液体であり,約2000IU/lのアミラーゼを含んでいた。この実験から培養唾液腺を移植する実験系を作成することが可能となり,また培養唾液腺細胞が生着可能であることが明らかとなった。培養唾液腺細胞はinvivoにおいて腺管構造を示さず分泌は開口分泌によっていることが考えられたが,少なくとも唾液腺細胞としての分化を誘導できることが示された。この結果については現在投稿中である。
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