平成9年度は主に薬剤による急性顎関節炎モデル動物を作成し、皮質誘発による顎運動の運動軌跡解析を行った。薬剤注入に先立ち、家兎の顎関節構造を確認する目的で連続組織切片を作成し、顎関節周囲の構造を把握。確実な上関節腔内注射を確認するためにメチレンブルーを用いた注入確認実験を施行し、24G針での複数穿刺で注入状態良好なることを確認した。その後に注入薬剤としてマスタードオイルを用いることにし、麻酔下の家兎の左側上関節腔に0.05〜0.1mlのマスタードオイルを注入。注入直後より経時的に皮質誘発顎運動を記録した。皮質誘発部位は左側の大脳皮質咀嚼野で刺激電極の刺入深度は2000μmから3500μmとした。咀嚼による負荷を与える目的で硬度の異なるグミを臼歯部に挿入して顎運動軌跡の変化を観察した。その結果、薬剤注入により、下顎の安静位で正中が注入側に偏位し、皮質誘発による開口量が減少する傾向がみられた。また、これまで言われているように正常側ではグミ咀嚼によって側方偏位量が増えるが、薬剤注入側ではその偏位量がより増加する傾向があり、軌跡も歪む傾向がみられた。今後、例数を増やし、より詳しい解析を行う予定である。 また、平成10年度は関節円盤転移モデル動物を作成し、同様の測定および解析手段を用いて顎運動の軌跡解析を行うとともに慢性動物でも関節円盤転移動物を作成し、非麻酔の咀嚼時の顎運動の軌跡解析を行う予定である。
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