研究概要 |
本研究では,チロシンリン酸化阻害剤の癌浸潤転移抑制薬としての臨床応用への可能性を追求することを目的に,既にin vitroにおいて明らかにしたチロシンリン酸化阻害剤のMMPの産生及び活性化の抑制が実際に浸潤転移形成の抑制に対し有効であるかを検討している。局所浸潤からの転移巣形成までの各過程における本阻害剤の効果を各実験モデルを用いて検討するものであり,本年度は腫瘍の浸潤過程における検討を行った。すなわち腫瘍浸潤部局所における免疫組織学的検討,および最近開発されたin situ Zymographyにより癌細胞のMMP活性と浸潤能への効果を検討した。 in vitroにおける浸潤能の検討: EGF,ハービマイシンAで処理したHSC2,HSC3培養細胞のin vitroにおける浸潤能をmatrigel invasion chamberを用いたinvasion assay,および浮遊コラーゲンゲル上細胞培養法を用いたinvasion assayにより測定した。前者においては有為な差は認めなかったが後者においてEGFによる浸潤の増強,ハービマイシンAによる抑制が認められた。 in vivoにおける浸潤能の検討 培養細胞をヌードマウスの舌に局注し口腔癌の局所浸潤モデルを作成し免疫組織化学的およびin situ zymographyによりin vivoにおけるMMP活性と浸潤能を検討した。免疫組織学的にMMPの存在が確認された。浸潤先端部でMMP活性を検出した。しかしながらハービマイシンAによる浸潤抑制効果については本浸潤モデルにおいては明らかな証明はできなかった。
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