研究概要 |
c-fosは癌遺伝子の一つであり,細胞増殖や分化の制御に関わっている.また中枢の神経細胞においては,疼痛等様々な末梢刺激に応答し発現する.このことからc-fosは短期の細胞性応答を長期の細胞性応答に転換する際に働き,学習や記憶に関与すると考えられている.現在までわれわれはラットを用い,行動実験で実際に確認した癌化学療法剤投与,X線照射等の悪心誘発性刺激に対するc-Fosタンパクの延髄弧束核・最後野での発現を免疫組織化学的手法を用いて検索し,刺激の応答部や求心系の伝達経路を明らかにしてきた. 求心路検索の次段階として,実際にc-fosが行動変化に関与していること,つまり<悪心誘発刺激投与-中枢での応答-悪心発現-悪心誘発刺激からの回避行動>という一連の経路において,c-fosが関与していることの証明を,今回の実験目的とした. 今年度は,通常c-fosが発現する刺激に対して,同遺伝子の発現を抑制させる手段として,ノックアウトマウスを用いることとした.Jackson-Jaboratory社(米国)よりヘテロ型ノックアウトマウスを雄雌各2匹ずつ購入し,本大学歯学部動物実験施設の遺伝子変異動物専用飼育室に収容,交配開始した.現在安定した実験および交配用動物の確保中である.これと並行して,条件付け味覚嫌悪行動試験を行っているが,現在のところ有為な差はみられず,手技の安定化に配慮し,追加実験中である.
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