研究概要 |
1. ヒト正常口腔粘膜上皮は、未熟なT細胞のTCRβ遺伝子の再構成V(D)J転位の補因子であるIL7とKeratinocyte growth factor(KGF)レセプターであるFGFR2IIIbを発現し、口腔粘膜固有層のT細胞は、KGFおよびIL7レセプター(IL7R)を発現していた。口腔扁平苔癬病変部においては、粘膜上皮のIL7の発現は低下し、基底細胞直下に浸潤したT細胞の多くは、KGFおよびIL7Rを強発現していた。このことは、KGFおよびIL7を介したT細胞とケラチノサイトの相互作用による生理的な口腔粘膜上皮の維持が、口腔扁平苔癬においては変化していることを示唆していた。また、本結果は、炎症性腸疾患の一つである潰瘍性大腸炎の研究報告と類似しており、両疾患の発症機序の共通性が推測される。 2. 口腔扁平苔癬病変部のαβT細胞のTCRVβ鎖の解析により、Vβ1,8,22等の発現は高かったが、全体として明らかなクローナリティーは認められなかった。この結果は、少なくとも、これらT細胞は単一抗原を認識しているのではなく、複数抗原の認識もしくは、抗原非特異的反応の可能性を示唆していた。今後は、本疾患が、病変部に浸潤するT細胞のT ce11 receptor(TCR)とhuman leukocyte antigen(HLA)分子の反応性の変化による抗原非特異的免疫反応であるとの見地から研究を行う予定である。
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