前年度まで、口腔扁平上皮癌細胞株を用いて、癌細胞をTNFαで刺激すると転写因子NF-κBが活性化され、MMP-9の発現が上昇することを示した。さらに癌細胞のプロテアソームをプロテアソームインヒビターで抑制することによってMMP-9発現を強力に抑制できたため癌細胞の浸潤がプロテアソームインヒビターで制御できる可能性がひらけた。本年度はさらにボイデンチャンバーを用いて癌細胞の運動能に、対するプロテアソーム/NF-κB系の関与を調べた。その結果、 1) 癌細胞をTNFαで刺激するとその運動能が促進された。 2) 癌細胞の運動能はプロテアソームインヒビターによって抑制された。 3) 癌細胞の運動能は線維芽細胞が共存することによってさらに強力に亢進した。 4) 癌細胞と線維芽細胞を共存培養するとNF-κBの活性化、MMP-9発現が増強された。 5) プロテアソームインヒビターは線維芽細胞の効果も抑制した。 以上の結果から、癌細胞のMMPを介した運動能にプロテアソームが関与し、プロテアソームを抑制することは、癌浸潤の制御に効果があると考えられた。また、線維芽細胞の存在は癌細胞の浸潤に寄与するが、その線維芽細胞の作用もプロテアソームインヒビターによって抑制され、プロテアソームが癌浸潤抑制のターゲットの1つになりえることが示唆された。
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