顎関節授動術を受ける患者のインフォームドコンセントを得た後、摘出した顎関節部の滑膜細胞の一部を培養し、顎関節滑膜細胞試料とした。 直線偏光近赤外線照射装置は東京医研製HA-550を用い、照射のためのプローブは830nm近傍の波長の光線のみを偏光化するものを東京医研株式会社に特別に依頼し、作製・使用した。直線偏光近赤外線は光作用だけでなく、温熱作用もある。照射出力が180mW放射束では培地の温度上昇(42℃以上)が起こり、一酸化窒素(NO)産生量のどちらが影響するのかが不明となる可能性があるため、今回は照射出力を130mW放射束に低下させて温熱作用を除去し、830nmでの直線偏光光線の光作用が顎関節滑膜の一酸化窒素(NO)産生動態にどのように影響するかを検討した。照射時間は0分、5分、10分の3群とし、発生するNO電流値をインターメディカルNO-501を用い、real timeで30分間測定した。 顎関節滑膜培養細胞からのNO産生は、直線偏光近赤外線の照射量には関係なく、有意な変化は認めなかった。この結果は実際の顎関節症患者の顎関節部への直線偏光近赤外線照射適用が患者のjoint effusionの有無に関係なく、症状を増悪させない経験と一致するものである。しかし、患者に直線偏光近赤外線を照射する場合、温熱作用も影響しており、実際照射部の温度の上昇も観察しており、直線偏光近赤外線のもつ温熱作用についても今後さらに検討が必要である。
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