唇顎口蓋裂患児の、術後の上顎舌房容積が下顎歯列弓へおよぼす影響を明らかにすることを目的として、本研究を行った。資料は当科にて手術を行った患者のうちHellmanの咬合発育段階IIIAに達した両側性唇顎口蓋裂(BCLP)10名、片側性唇顎口蓋裂(UCLP)13名、口蓋裂(CP)13名、および対照として健常児23名、計59名の上下顎石膏模型の上下顎石膏模型である。計測方法は上下顎歯列弓平行模型を作成し、歯列弓上の中切歯(乳中切歯)の舌側歯間乳頭部、両側第1大臼歯の近心舌側歯間乳頭部の3点で決定された基準平面において固定した後、それに垂直な方向から、規格写真を撮影し、画像解析ソフト【コスモゾーン】を用いて二次元の計測(歯列弓長径、幅径)を行った。また上顎舌房容積の計測は、上顎歯列模型の口蓋部分にあらかじめ比重を計測しておいた粘土を填入し、その咬合側平面は切縁・咬頭頂を含む面と可及的に一致するように、粘土面を平滑なガラス棒に押しつけ、余剰粘土を溢出させて平滑な面とした。また後縁面は、左右上顎結節突出点を結ぶ線から咬合平面に対し、垂直に粘土を切り離した面とした。唇・頬側は、前歯切縁、犬歯の尖頭、臼歯の舌側咬頭頂を結ぶ線上で粘土を咬合平面に垂直に切り離し、外郭面を形成した。粘土を模型より取り外し、電子天秤にて重量を計測し、粘土の比重より上顎舌房容積を算出した。これらを検索した結果、以下のことが明らかになった。 1.口蓋裂手術群の舌房容積は健常児に比較して有意に小さかった。 2.口蓋裂手術群の下顎歯列弓長径、幅径、歯冠軸の傾斜度は健常児に比較して有意に小さかった。 今後、上顎舌房容積との下顎歯列弓の長径、幅径、頬舌的傾斜度との相関関係を調べ、口蓋容積の減少による低位舌の下顎への影響を検討し、解析中である。
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