今回の研究において、まず平成9年度は、麻酔下のSD系ラットを用いて、三叉神経系を含んだ感覚入力の伝達経路である視床髄板内核群(外側中心核・束傍核)の侵害受容ニューロンに対して侵害刺激を行った場合のスパイク発射活動をガラス毛細管微小電極を使用して観察した。単一-ニューロンのスパイク発射活動を細胞外電位として導出し、規格化した自然刺激(ブラッシング、ピンチ等)を用いて、受容野の確認と、機能的同定を行った。空気吸入時の自然刺激に対する単一ニューロンのスパイク発射を記録し、これをコントロールとした。その後、笑気吸入を開始し同一の刺激を繰り返し記録した。発射活動は、すべてデーターレコーダーに保存した。実験終了後、イオン導入による記録部位の色素マ-キングを行い、固定・保存した。また、同様に腹側基底核群(後外側・後内側)の侵害受容ニューロンに対して、一連の記録および組織保存を行った。その後、スパイク発射数のヒストグラムを作成し、最高発射数による検討を行った。また、記録部位は組織学的に確認した。 視床髄板内核群は、侵害受容性情報伝達の上行路に含まれ、情動反応や痛みに対する行動に関与していると考えられている。また腹側基底核群の被殻領域に分布する侵害受容ニューロンは、脊髄神経および三叉神経領域の知覚の上位中継核の一つで、体部位局在性を有し、刺激を受けた部位の特定に重要な役割を担っている。今回の実験では、視床髄板内核群および腹側基底核群の侵害受容ニューロンの多くで、笑気吸入によりスパイク発射数の減少が認められた。次年度においては、計画のようにマルチバレル型電極を用いて、薬剤局所・全身投与および生体内疼痛抑制系賦活などを行い、その影響を観察し検討を行う予定である。
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