正貌、側貌ともに正常な顔面形態を有し、顎関節ならびに上下顎関係に異常を認めない20〜30歳代の本学学生60名(男性29名、女性31名)を対象とし、最大開口量を計測した.また、閉口時の側方頭部X線規格写真を撮影し、トレース後、距離的計測項目としてセラとナジオン間の距離(S-N)、下顎頭中心部と下顎中切歯先端間の距離(C-I)、下顎頭中心部とゴニオン間の距離(C-Go)、ゴニオンとグナチオン間の距離(Go-Gn)、第1頚椎最突出最下点と第5頚椎最突出最下点間の距離(C1-C5)、舌骨体部最突出最下点から第1、2頚椎前縁平面に直交して頚椎前縁までの距離(Hl)、第3頚椎最突出最下点からHl線までの垂直距離(Hh)、舌骨からオトガイ棘間の距離(H-G)、下顎下縁平面から舌骨までの垂直距離(Mplane-H)、ボルトンと舌骨間の距離(Bo-H)、セラと舌骨間の距離(S-H)について計測した.角度的計測項目としてSN平面とCgo平面とのなす角度(SN-OGo)、下顎頭中心部とゴニオンとグナチオンを結んだ角度(C-Go-Gn)、ナジオンとセラと舌骨を結んだ角度(N-S-H)、ボルトンと舌骨とグナチオンを結んだ角度(Bo-H-Gn)について計測した.この15因子を最大開口量の説明変数として、段階式重回帰分析を行った.その結果重相関係数0.72で選択された因子は下顎長(C-I距離)、頭蓋底長(S-N距離)、舌骨とオトガイ棘間距離(S-H距離)であった.これらでの最大開口量の予測式はY=(43.995+0.513Xa+0.5165Xb+0.3805Xc)÷11:Xa=C-I距離(mm)、Xb=S-N距離(mm)、Xc=H-G距離(mm)となり関与率は50.7%と高い値であった.この予測式に3つの因子による、あてはめ値と実測値では77%が±5mmであり、少ない誤差で予測可能と考えられた.
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