これまでに、正貌、側貌ともに正常な顔面形態を有し、顎関節ならびに上下顎関係に異常を認めない20〜30歳代の本学学生を対象とし、最大開口量を計測し、閉口時の側方頭部X線規格写真を撮影した。トレース後、距離的計測項目と角度的計測項目の15因子を説明変数として、最大開口量について段階式重回帰分析を行った。その結果、重相関係数0.71で選択された因子は下顎長(C-I距離)、頭蓋底長(S-N距離)、舌骨とオトガイ棘間距離(II-G距離)であった。これらでの最大開口量の予測式はY=(-43.995+0.513Xa+0.5165Xb+0.3805Xc)÷1.1:Xa=C-I距離(mm)、Xb=S-N距離(mm)、Xc=H-G距離(mm)となり関与率は50.7%と高い値であった。そこで、顎変形症患者の術前および下顎枝矢状分割術後の最大開口量を計測し、さらに最大開口量の予測式にあてはめた。術前の最大開口量の平均は50mmで、術後は45mmであった。下顎長とした(C-I距離)の平均は99.6mmで、頭蓋底長(S-N距離)の平均は65.7mm、舌骨とオトガイ棘間距離(II-G距離)は37.6mmであった。予測式での最大開口量の平均は50.2mmで、あてはめ値と実測値とを比較すると53%が±5mm以内であったが、正常者での77%に比較し誤差が多かった。 数列ではあったが、顎関節症における開口障害患者においての予測においては±5mmの予測ができた。しかし、本研究の結果より顎変形症患者においては誤差が多く、頭蓋顔面形態からの顎変形患者の最大開口量の予測は、他の因子について検討する必要性が示唆された。
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