研究概要 |
MRIにより非復位性顎関節円板前方転位と診断され,約2〜3か月間のスプリント等の系統的保存療法が奏効しない顎関節内障18例に対して,上顎関節腔洗浄療法時の関節腔内圧を測定し,臨床所見との比較検討を行なった。 患側の上顎関節腔に21ゲージ注射針と18ゲージ注射針を穿刺し,穿刺部位より1m上方に設置した生理食塩水200mlにて洗浄した。その際の関節内圧の測定は,OHMEDA社製圧トランスデューサーと日本光電社製,血圧測定用アンプを用いて行なった。その後,18ゲージ針より細口径関節鏡を用いて上関節腔内の状態を鏡視した。 今回の研究の結果は以下の通りであった。 1, 上顎関節腔洗浄時の関節内圧の平均は,50.98±16.79mmHgであった。 2, 関節鏡視所見では4例に軽度から中等度の線維性癒着が認められたが,上顎関節腔洗浄時の圧と有意な関連性は認められなかった。 3, 上顎関節腔洗浄療法の終了時の圧が開始時と比較して約半分になった症例が3例あり,いずれも開口量の改善が認められた。 今回の検討では,開口障害,上関節腔内の線維性癒着および関節洗浄時の圧との間に有意な関連性は認められなかった。しかし,上顎関節腔洗浄療法終了時の圧が開始時の圧と比較し,約半分に低くなった症例では開口量か著明に改善した。今後は,さらに関節包や外側靭帯などの,関節構成体の性状も考慮して検討する必要性があるものと思われた。
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