研究概要 |
1.人工材料による下歯槽神経欠損部架橋に関する実験的研究 日本白色家兎の下歯槽神経欠損部(10mm)にポリエーテルアルコールチューブを移植した。対照にはシリコーンチューブを用いた。移植手術後、動物を12,24,40週後に屠殺し、光学顕微鏡所見を中心に、神経再生状態の形態学的変化を観察した。 その結果、両群共に良好な神経組織の再生が認められ、経時的に有髄神経線維数の増加が認められた。ポリエーテルアルコールチューブ移植群においては、シリコーンチューブ移植群に比べ、神経周膜様構造物の形成量が多く認められた。これは、チューブ内外の体液交換が可能なポリエーテルアルコールの特徴的所見と考えられたが、組織親和性の問題も考えられた為、に追加実験を検討中である。(以上の研究結果については、第51回日本口腔科学会総会、第42回日本口腔外科学会総会において発表した)今後は、人工材料への神経栄養因子の付加による軸索再生促進について、in vivoによる研究を行う予定である。 2.神経移植後の口腔知覚機能の回復について 現在口腔外科領域では、下顎骨切除手術に伴う神経損傷に対して、神経縫合や神経移植などの神経修復手術が行われている。この手術内容に対して臨床統計的検索を行ったところ、神経移植手術は58.5%を占めていることが明らかになった。また、これらの症例の知覚回復過程をSemmes-Weinstein Monofilamentsを用いて観察を行ったところ、術後約6ヶ月で機能的に良好な知覚閾値にまで回復するのが確認された。今後はこれらの結果を元に、人工神経の臨床応用への可能性について基礎と臨床の両面より解明していく予定である。
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