佐竹 弘らの報告(麻酔と蘇生、32、61-65、1996.)を参考にし、リドカイン-テトラフェニルホウ酸イオン対、フタル酸ジ-nオクチル及びポリ塩化ビニール(PVC)をテトラヒドロフランに溶解し、PVC管に固定した銅線の表面に被覆してリドカイン選択性被覆線型電極を作製した。PVC感応膜の肥厚は、0.4mm程度になるようにした。そして対極の基準電極に銀-塩化銀電極を使用し、リドカイン選択性被覆線型電極を指示電極として東亜電波工業社製イオンメーター(HM-40V)にて、リドカイン濃度の試験的測定を行った。測定対象は、ビーカーに入れた市販の局所麻酔薬キシロカイン1%及び2%溶液(アストラ社製)とした。それぞれの濃度で電極電位の応答を得た。次に、リドカインの拡散速度を分析して浸潤様式をシュミレーションするための試験的実験として、電極をスポンジの中央に挿入し、局所麻酔薬をスポンジの端から注入して得られる電位の経時的変化をコンピュタ-(モンテシステム社製BIO PAC MP100)に取り込みデータ処理を行った。リドカインの濃度変化を経時的に観察でき、拡散速度を分析できることを確認した。次に、ウサギの口腔粘膜にリドカインを注射した後の濃度変化の採取やビーカーに入れた血液にリドカインを溶解してその濃度を測定した。これらの生体では、電位値と濃度の相関が不安定であった。そのため、本研究の当初の計画では電極設置場所を犬の歯肉及び歯根膜と考えていたが、歯髄を抜髄し死腔となった根管の尖部に挿入することを計画している。また、生体における測定で安定性を向上させるため、タンパク質の影響ができるだけ少ない被覆材料を試験中であり、再度電極製作を行っている。
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