【対象および方法】全身麻酔下にて下顎骨後退術に伴う顎間固定を行った患者8名のうち、術前および顎間固定後の呼吸経路により以下の3群に分類した。 1.術前および顎間固定後ともに呼吸経路が鼻呼吸のみであった症例4例(N群) 2.術前は鼻呼吸のみがみられ、顎間固定後には鼻呼吸と口呼吸を行っていた症例3例(N→NO群) 3.術前に鼻呼吸と口呼吸がみられ、術後に口呼吸のみであった症例1例(NO→O) 顎間固定後、N群およびN→NO群では鼻呼吸経路を、またNO→Oでは口呼吸経路を遮断し、胸郭および腹壁呼吸運動をストレインゲージ式呼吸pick upを用いて記録した。同時に各呼吸経路遮断時における終末呼気炭酸ガス分圧(EtCO_2)と経皮酸素飽和度(SpO_2)を計測した。測定が可能な症例では動脈血酸素分圧(PaO_2)および二酸化炭素分圧(PaCO_2)を測定した。 【結果】N群では鼻呼吸経路の閉塞によって 胸郭・腹壁呼吸運動および各測定項目に変動はみられなかった。N→NO群では鼻呼吸および口呼吸経路が解放している状態では規則的な呼吸運動を示したが、鼻呼吸経路閉鎖により不規則となった。鼻呼吸経路の解放により規則的な呼吸運動に回復した。 NO→Oでは口呼吸経路の遮断により、胸郭および腹壁の運動が著しく抑制され鼻呼吸への移行も不可能であった。動脈血液ガス分析値は、口呼吸経路遮断約1分後にPaO_2は93.2mmHgから74.6mmHgへ低下した。PaCO_2は45.7mmHgから50.0mmHgへ増加した。SpO_2は一時94%へ低下した。
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