研究概要 |
ラット口蓋部に実験的に瘢痕組織を形成する方法を検討することを目的として,無処置群,口蓋部の粘膜骨膜を切除した実験群(切除群),および同部に薬物(NaOH,ホルマリン,BCG)を投与した実験群(投与群)の3群を設定し,術後2週目(一部については術後4週目も)の組織標本を作成して観察した. 1.切除群の口蓋においては,切除部に相当する領域は口蓋粘膜上皮により覆われていたが,同部の口蓋雛壁は消失しており,その粘膜上皮下には膠原線維を主体とした肉芽組織の形成が認められた. 2.0.25N NaOHあるいは0.25%ホルマリンを投与した実験群では,上皮組織に変化はなかったが,投与部に相当する口蓋粘膜上皮下には膠原線維を主体とした肉芽組織の形成が認められた. 3.0.5N NaOHあるいは5%ホルマリンを投与した場合には,口蓋粘膜上皮の欠如のみならず,骨の露出と破壊も認められた.しかしながら,この場合にも破壊された骨組織に相当する領域には膠原線維を主体とした肉芽組織の形成が認められた. 4.BCGを投与した実験群では,上皮組織に変化はなかったが,口蓋粘膜上皮下に強い炎症性細胞湿潤と肉芽組織の形成が認められた.しかしながら,術後2週目ではこの肉芽組織中には膠原線維はほとんど認められず,術後4週目になると膠原線維の増加が認められた. 以上の結果,今回用いた方法により,実験的な瘢痕組織の形成が可能であることが明らかとなった.また,瘢痕形成法や形成された瘢痕の性状を考慮すると,手術を含む瘢痕と成長発育との実験には粘膜骨膜を切除する方法が,また瘢痕の存在そのものと成長発育との実験には0.25N NaOHあるいは0.25%ホルマリンを投与する方法が適していると思われた.
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