本研究は破骨細胞の分化過程と細胞-細胞間もしくは細胞-基質間に働く接着分子の発現と消退およびそのシグナル伝達機構を検討することにより、どのような分子がどの形成stepでcriticalな役割を果たしているのかを明かにし、さらにそのstepを制御する因子を同定し、将来的には、治療による骨改造機構への応用を試みることを目的とするものである。本年度の研究成果を以下に示す。 末梢血中の破骨細胞前駆細胞からの破骨細胞の形成過程を検討した。Ficoll-Isopaque比重遠心法により末梢血中より単核の細胞画分(PBL)を採取し、この画分中に、末梢幹細胞のマーカーであるCD34陽性細胞の存在が確認された(1%以下)。このPBLを、歯根膜由来線維芽細胞と直接接触させて共存培養すると、TRAP陽性で多核の破骨細胞様細胞が形成された。さらに象牙質切片上で培養するとアクチンリングを形成し、ビトロネクチンレセプター(αvファミリー)陽性、pp60^<c-src>陽性であった。また、急性前骨髄性白血病患者の末梢血より樹立され、promyelocyteの性質を示す細胞株HL-60と急性単球性白血病患者の末梢血より樹立され、monoblastの性質を示す細胞株THP-1を用いて比較検討したところ、活性型ビタミンD3の共存のみでは両細胞ともTRAP陽性多核細胞の形成が認められなかったが、歯根膜由来線維芽細胞と直接接触させて培養すると、HL-60より、TRAP陽性多核細胞の形成が認められた。 以上の結果より、歯根膜由来線維芽細胞は、破骨細胞の形成を支持するストローマ細胞としての役割をもつ可能性が考えられ、前駆細胞との直接接触時に働く接着分子が何であるか興味深い。細胞株を用いた実験により、この機能は、細胞の分化段階に依存することが推察された。液性因子の関与については現在検索中である。
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