摂食・嚥下機能の成長を調べることは、機能障害の原因究明、治療法の確立に有用である。本研究では無麻酔、無拘束ウサギの摂食・嚥下動態の経日的変化を観察することを目的に実験計画を立てた。実験・観察系の整備を行うにあたり、まず、被験食品の物性とエックス線テレビによる嚥下動態の観察条件について検討した。嚥下時食塊の細かな動態を分析するには食物に造影剤を添加する必要がある。そのため、乳児期観察用に人工乳とバリウム溶液の混合液、離乳期用に粘性を付与した嚥下機能検査食(バリウム溶液、加工澱粉を主成分とする増粘剤と水を主原料とする)を試作し、ウサギおよびヒト用に利用可能か調べたところ、成人の嚥下、乳児の吸綴運動、嚥下に興味ある知見が得られた。 ヒト乳児は成人と大きく異なる動態で嚥下すると言われているが、詳細についての報告はわずかである。そこで、造影剤を混和した人工乳を乳児にあたえ、エックス線テレビ撮影したところ、極めて解像度の高い画像が得られた。被曝量を考慮したため毎秒12.5フレームの撮影条件であったが、乳汁の移動様相、軟組織の形態変化をフレーム毎に解析し、一連の吸綴・嚥下動態をこれまでにない精度で明らかにすることが可能であった。吸綴時の舌運動を初めて定量解析し、小児歯科学雑誌に投稿した。嚥下動態については詳細な時間的計測を行い、摂食嚥下リハ学会雑誌に投稿した。 嚥下機能検査食は粘性を変化させて、7種類の試料を作製し、エックス線テレビによる健常成人舌・咽頭の動態と舌骨上筋群の活動様相を検討した。ネクター状の低粘性試料、ヨ-グルト状の中等度粘性試料では動態に差が認められなかったが、7分粥状の高粘性試料になると、嚥下口腔相の筋活動時間が延長した。嚥下機能の(障害)程度に応じて試料を選択することで、より明確な機能診断が可能になると推察された。この結果については顎口腔機能学会雑誌に投稿した。
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