本年度は、Porphyromonas gingivalis ATCC 33277及びその血球凝集活性欠損株であるM2株、M3株の菌体及び外膜小砲(0M-V)を用いてヒト歯肉線維芽細胞(HGF)に対する細胞毒性を調べた。菌体のBApNA分解活性はM3株が最も強く、33277、M2株は比較的弱い活性を示した。一方、BLpNA分解活性は33277株では確認できたが、他の2株では検出できなかった。菌体によるHGFのDNA断片化について調べた結果、3株ともコントロールに比べて18〜21倍のDNA断片量が検出された。HGFに対する細胞凝集活性は、M3、M2、33277株の順に強かった。OM-V標品のBApNA分解活性はM3、33277株で強く、M2株では非常に弱い活性しか認められなかった。BLPNA分解活性は、33277、M3株の順で強く、M2株てはほとんど認められなかった。OM-VによるHGFのDNA断片化は、M3、33277株の順に強く認められ、M2株ではほとんど認められなかった。また、HGFに対する細胞凝集活性は33277、M3株の順に強く、M2株では全く検出できなかった。 以上の結果から、M2株は菌体でもOM-Vでも非常に弱いトリプシン様酵素活性しか認められず、菌体ではHGFに対してDNA断片化も細胞凝集活性も明らかに認められたものの、OM-Vでは両作用とも認められなかったことから、M2株の菌体には存在するがOM-Vには含まれない細胞毒性因子と細胞接着因子が存在することが示唆された。今後は菌体標品とOM-V標品について生化学的あるいは形態学的解析を加え、これらの因子についてその作用機序とともに検索を進めていく予定である。
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