研究概要 |
これまでの研究においてDAIの有用性について確認し、これを用いて調査を行ってきたが、DAIの評価項目に含まれていない不正咬合の評価項目についても検討する余地があると考えられた。そのため、イギリスにおいて、O'brienらにより提唱されたIndex of Orthodontic Treatment Need(IOTN)の日本における有用性について検討を行った。これまでに用いられてきた不正咬合の疫学的評価法は、形態・機能(歯牙の排列、咬合状態)的視点、あるいは審美的視点から数量化が試みられてきた。DAIとIOTNは、歯列咬合状態について形態・機能的および審美的側面の両方から評価を行う点において共通した評価法である。しかし、DAIが形態的評価と審美的評価とを重回帰分析によって1つのスコアとして表現しているのに対し、IOTNは審美的な評価を行うAesthetic Component(AC)と形態・機能的な評価を行うDental Health Component(DHC)とに分けて評価される。 DAIとIOTNの両評価方法を用いて日本人高校生の歯列咬合状態を評価し、DAIおよびIOTNを構成するACとDHCの3つの評価値を比較したところ、評価結果の間には同程度の高い相関が認められ、治療必要度に関するスクリーニングレベルでは、DAIはACとDHCの間に位置していた。しかし、対象者の52%を治療必要性ありと判定したDHCを用いることによっても、DAI,ACにより治療必要性が認められるものを網羅していないことから、不正咬合のスクリーニング方法として応用する場合には更なる検討が必要であると考えられた。
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