研究概要 |
エナメル質表層における再石灰化反応の促進と同反応領域の拡大を目的に,CaとP濃度を高めた再石灰化液を調製し,エキシマレーザー光照射と再石灰化液の同時作用を試みた。 材料はヒト新鮮抜去上下顎大臼歯1歯から作製した1対のエナメル質片を用い,それらを乳酸緩衝液(0.3mM-HAp,pH4.5)中で人工脱灰を行い,一方を同時作用群,他方を非対照の対照群とした。再石灰化液は、Ca:36.0mM,P:21.6mM,CMC:1%を基本組成とし,F:0.5〜5.0ppm,尿素およびTiO_2を添加して調製した。同時作用群は再石灰化液にエナメル質片を攪拌しながら浸漬し,70mJ/cm^2,2000shotsの条件でエキシマレーザー光照射(248nm)を行なった。SEM像は、エネメル質片を0.1M-乳酸緩衝液(pH4.0)で脱灰し,脱灰前・後で観察した。 各同時作用群のSEM像は、対照群に比較して平滑,かつ脱灰前・後で酸による強い侵襲像がみられなかった。同時作用群の硬度は,対照群に対して1.40〜1.74倍の増加を示した。同時作用群のCa溶出量は,対照群に対するCa溶出量の抑制率で12.9〜53.3%を示した。 Ca溶出量は,種々再石灰化液の組成から,フッ素(5ppm)添加群で38.9〜53.3%と高い抑制率を示したが,フッ素(5ppm)を添加した群の硬度の増加率は,1.40〜1.65倍で必ずしも耐酸性試験の結果とは一致しなかった。しかし,SEM像の所見,耐酸性の付与および硬度の回復から総合評価すると,基本組成にフッ素(5ppm)を添加した群、さらに同組成に尿素を添加した再石灰化液の同時作用群が良好な成績を示した。両液はいずれもフッ素(5ppm)の添加群であり,同濃度のフッ素の高濃度再石灰化液における共存が,紫外域のレーザー光照射によるエナメル質再石灰化反応をより効果的に促進するものと考えられた。
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