当初使用を予定していたラット頭蓋冠由来骨系細胞をヒト下顎骨由来骨系細胞に変更した。これは1人の外科矯正患者から手術時に下顎皮質骨由来の細胞と下顎第1小臼歯由来の細胞を同時に採取することが出来、両細胞の比較が容易になったためである。また既に確立されている改良型伸展力反復負荷装置が24時間を越える長時間の培養において、モーター部付近の熱が原因と思われる培養細胞の変性や感染を引き起こすことが問題となった。そこで培養細胞に付与するメカニカルストレスとして遠沈器の改良により、細胞に種々の程度の持続的もしくは間欠的な遠心力(G)を付与する実験モデルに変更した。上記のヒト骨系細胞に遠心力を付与して3日間培養したところ、持続的ならびに間欠的な弱い遠心力では細胞の増殖能(DNA量)は遠心力を付与しないもの(対照群)に対してわずかな増加傾向が認められたが統計学的な有意差はみられなかった。一方骨系細胞の産生するアルカリフォスファターゼ活性はDNA量にみられる傾向がより顕著になり、持続的な弱い遠心力ならびに間欠的な中等度あるいは強い遠心力で対照群より有意に増加した。またヒト歯根膜細胞ではDNA量、アルカリフォスファターゼ活性ともに中等度の持続的遠心力と強い間欠的遠心力で対照群に対する有意な増加が認められた。さらに遠心力を用いない静置培養を両細胞を用いて行い、60m w GaAIAs半導体レーザーを照射して両細胞の産生するアルカリフォスファターゼ活性やDNA量を測定したがレーザー照射により両測定項目に有意な変化はみられなかった。現在半導体レーザーの照射時間等の詳しい条件を検討中であり、静置培養細胞に対するレーザー照射の効果を十分に考察したうえで遠心力による回転培養とレーザー照射の組み合わせを計画していきたい。
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