半導体レーザーの照射が顎骨内に植立したチタンインプラントの創傷治癒を促進する可能性をin vitroにおける細胞レベルで検討する目的で以下の研究を行った。 下顎骨片由来の骨系細胞と下顎第一小臼歯由来の歯根膜細胞は同一外科矯正患者より同時に得た。継代6代目の両細胞を24穴プラスティック培養皿に1穴当たり5×10^3個播種し、72時間培養した。この際、培養皿底面に適合するチタン板を用い、その上に細胞を播種するもの(チタン群)と培養皿に直接細胞を播種するもの(プラスティック群)とに分類した。また半導体レーザーを照射しない対照群とレーザーを培養24時間後に1回照射する1回群、培養24時間、48時間後に2回照射する2回群とに分けた。培養終了後の両細胞を用いてDNA量とALP活性を定量したところ次のような結果が得られた。 1. 骨系細胞のプラスティック培養下では種々のレーザー照射による有意なDNA量とALP活性の変化は認められなかった。一方、チタン培養下ではレーザー照射により対照群に比べて有意なDNA量とALP活性の増加が認められ、特に1回10分照射群では、同条件のプラスティック群との有意差(DNA量とALP活性)もみられた。 2. 歯根膜細胞については骨系細胞とは異なり、チタン板の有無、レーザー照射の有無にかかわらず、定量されたDNA量とALP活性はほとんど一定であり、唯一レーザーの2回10分照射群でのDNA量が対照群に比べて有意に高い値を示した。 以上の結果よりチタン板上で培養した骨系細胞の増殖能と分化能は半導体レーザーの照射により促進される可能性が示唆された。
|