研究概要 |
調査対象者は在宅健常者107名、施設居住者158名、合計265名である。調査は、全被検者を対象として、口腔内検診および聞き取り質問紙調査を実施した。アンケート項目の中の28食品の食品摂取応答(噛める・噛めない)の回答率のパターンにより、代表的な8品目を選択し、食品摂取スコア(foodacceptance score,FAS)を開発した。また、生活の質的要因解析のために作成した、12の質問項目から、生活態度および満足度(DSDL)のスコア化を行った。本研究では数量的に計測することが困難な咀嚼の自己評価と生活の質的要因を指標化することにより相互の関連性を検討した。 これらの指標から関連要因(身体要因(口腔内所見、全身的状態など)、心理・行動要因、社会・経済要因)を比較して次の結論を得た。 1) 食品摂取スコアと関連要因を比較したところ、年齢、施設入所、現在歯数、義歯装着状態、受診・受療行動で関連が認められた。 2) 生活態度および満足度(DSDL)と食品摂取との関連では、DSDLが高い群で、食品摂取スコアは高くなった。 3) 要因解析の結果、義歯装着者については義歯の状態の因子が、義歯を装着していない者では口腔内所見の要因が関連し、その他にDSDLや心理・行動要因が関連していることが解析された。 老年者における咀嚼機能は現在歯や義歯の適合性も重要であることが示されたが、その一方で現在までは取り挙げられることが少なかった心理・行動要因や生活の質的要因が深く関わっていることが示唆された。
|