口腔内圧測定には文献上大きくわけて2通りの方法がある。小型ひずみゲージを用いる方法と圧力トランスデューサーに接続したチューブを口腔内に挿入し気圧を測定する方法だが、今回は対象者に嚥下障害患者群がいるため印象採得の必要性が無く簡便な後者の方法を用いることにした。測定方法は被験者の口腔内にチューブを挿入し、口唇もしくは前歯にて軽く保持させてから空嚥下を行わせた。成人男性による予備測定を行ったところ、同一人物においてもかなりのばらつきが見られた。その理由として、1.口唇圧・咬合圧の強弱による誤差、2.複数回の空嚥下によるチューブ内の唾液の介在による誤差、3.舌圧による誤差等が考えられた。この対処法として、1.出来るだけ、堅いカテーテルもしくは同一幅径の硬質な材料の使用、2.一度測定に使用したチューブは、完全に乾燥するまで使用しない、等が考えられた。嚥下時の超音波断層撮影に関しては、舌背・舌根部の動きは明瞭に確認できた為、嚥下時口腔内圧と同時の測定・記録により、理由3における舌圧による誤差はある程度まではスクリーニングが可能であると思われる。また嚥下障害患者群においては、口唇や前歯でのチューブの保持が困難な症例が見受けられた。来年度の課題及び展開としては、1.測定用カテーテルチューブの挿入方法及び挿入部位の再検討、2.嚥下障害患者の選択基準の見直し、3.通常成人群・健常高齢者群・嚥下障害患者群における各データの測定、4.口蓋床を使用し口腔内容積を減少させた場合の各データの測定、5.それぞれの測定結果の統計学的検討を考えている。また、本測定装置を一部変更することで、嚥下時咽頭圧の測定も可能であるため、今後の課題として検討している。
|