本研究目的は、フッ素徐放性ボンディング剤を開発し、そのフッ素徐放性やフッ素徐放性ボンディング材塗布周辺歯質すなわち、コンポジットレジン接着修復窩洞周辺の歯質へのフッ素の供給を定量的に調べるとともに、その周辺歯質の耐酸性の変化を検討することである。そこで、今年度は予備実験として、フッ素徐放性ボンディング材(Imperva Fluorobond:松風)および従来のフッ素徐放性小窩裂溝填塞材に物理的改良を加えたフッ素徐放性シ-ラント(TeethmateF-1:クラレ)からのフッ素徐放量を経時的に測定した。すなわち、アクリル板を一定の円板状にくり抜き、その部分にフッ素徐放性ボンディング材およびフッ素徐放性シ-ラントを充填して硬化させ、ペレットを作製した。このペレットをアクリル板ごと蒸留水中に12時間浸積し、ペレットの表面から蒸留水中に溶出するフッ素量を測定した。この結果は次年度の規格窩洞を用いたエナメル質生検および耐酸性試験の基礎資料とする。一方、脱灰エナメル質表面にフッ素徐放性ボンディング材を塗布した後に、フッ素徐放性ボンディング材から遊離したフッ素イオンが周辺脱灰エナメル質表面に取り込まれる様相を観察し、周辺脱灰エナメル質がフッ素を取り込むと同時に、再石灰化していく過程を電子線微小部分析装置(EPMA)を用いて観察した。すなわち、フッ素徐放性ボンディング材の一定量を一定面積の脱灰エナメル質表面に塗布、硬化させた後、フッ素を含有しない再石炭化液に3日間浸漬したところ、フッ素徐放性ボンディング材から徐放されたフッ素はフッ素徐放性ボンディング材を塗布した直下の脱灰エナメル質に取り込まれると同時に、周辺脱灰エナメル質にも取り込まれることを確認した。
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