昨年度はフッ素徐放性ボンディング材とフッ素徐放性シーラントを実験材料として、それらのフッ素徐放性を経時的に検討すると共に、徐放されたフッ素が、脱灰エナメル質に取り込まれる状態をEPMAで観察した。本年度はフッ素徐放性レジンセメント(PANAVIA Fluoro Cement:クラレ)をコンポジットレジン接着修復のボンディング材として応用することを考え、まず、レジンセメントのフッ素徐放性を検討した。実験試料は昨年度と同様に、レジンセメントのペレットを作成して、ペレットからのフッ素の溶出過程を経時的に定量した。すなわち、ペレットを蒸留水中に90分、3日間、10日間、および30日間浸漬し、ペレットの表面から蒸留水中に溶出するフッ素量をフッ素イオン電極(ORION社9409BN)を用いて測定した。その結果をフッ素徐放性シーラント(Teethmate-F1:クラレ)の溶出過程と比較したところ、レジンセメントからのフッ素徐放量が10日間浸漬試料において、有意に多いことを認めた。 一方、ウシエナメル質象牙質ブロックに規格窩洞を形成し、30秒間の酸処理後、フッ素徐放性レジンセメントを填塞し、スライドグラスでカバーした後、手圧下で可視光線を30秒間照射して硬化させた。その後、石灰化液に浸漬し、フッ素徐放性レジンセメント周辺の股灰エナメル質の再石灰化過程をMicroradiographyで観察した。試料を再石灰化液に1日、3日、10日、30日間浸漬した後に、microradiogramを作成したところ、10日目以降の試料の周囲エナメル質に再石灰化像が認められた。
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