海洋生物からは、多くの不斉炭素を含む多官能性分子や巨大分子が種々単離されているが、高分解NMRやMSなどの最先端の分光学的手法を駆使しても、これらの高次立体構造の決定は難しい場合が多い。本研究では、渦鞭毛藻Amphidinium sp.より単離した殺細胞活性を示す新規27員環マクロリド・アンフィジノリドLについて、酸化開裂フラグメントの立体異性体を合成することにより、高次立体構造を解明することを目的として以下の研究を行った。 1)これまでの研究において、4個の不斉炭素の絶対立体配置(21R、22S、23R、25R)を決定しているが、残る6個の不斉炭素の絶対立体配置は未決定であった。アンフィジノリドLの全立体配置を解明する目的で、(R)-3-ヒドロキシイソ酪酸メチルと(S)-3-ヒドロキシイソ酪酸メチルを出発原料として、t-BuLiを用いたクロスカップリング反応を鍵反応として、16位、18位、20位の不斉炭素を含むC-15〜C-26フラグメントの可能な8個の異性体のうちひとつのジアステレオマ-を合成した。 2)8位、9位、11位の不斉炭素を含むC-1〜C-14フラグメントに関しては、C-1〜C-6フラグメントとC-7〜C-14フラグメントとのWittig反応によるカップリングを鍵反応として、可能な2つの異性体を合成した。アンフィジノリドLとNMRデータを比較することにより、8位、9位、11位の相対立体配置は、8R^*、9R^*、11R^*であると推定した。
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