LiHやNaHは安価で容易に入手することができるものの反応性が低く、カルボニル化合物の還元反応には不活性であることが知られている。しかしながら、当量または触媒量のジアルキル亜鉛を加えると、0°Cまたは室温下カルボニル化合物の還元反応が劇的に進行し、目的の還元体を高収率で与えることを見い出した。本試薬は他のカルボニル化合物の還元反応にも極めて有効であることが分かった。芳香族アルデヒドや脂肪族アルデヒドさらに、非常にエノール化し易いと考えられるアルデヒドに対してもアルドール縮合することなく、還元反応が収率良く進行することが判明した。この還元反応は、アルデヒド、ケトンのみならず一般に反応が遅いと考えられるエステル、ラクトンに対しても有効であった。α、β-不飽和カルボニル化合物に対しては、1、2-還元体のみが収率良く得られた。 新規錯体は隣接いに不斉中心を有するカルボニル化合物に対するジアステレオ選択的な還元反応にも極めて有効であることが分かった。β位に不斉中心を有するカルボニル化合物のジアステレオ選択的還元反応を行うことによって、反応の活性種がジメチル亜鉛ハイドライドアート錯体であることを明らかにし、この反応の立体選択性の理論モデルを提唱することで選択性の予想を可能にした。
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