アキラルなビスラクチムエーテルとアキラルなアルデヒドとのアルドール型反応を、ビスラクチムエーテルに対して1.5当量のスズ(II)トリフレートと8当量のトリエチルアミン、0.3当量の(-)-スパルテインを用いて実施すると、反応は最高98%eeのエナンチオ選択性で進行することが明らかとなった。従来、エノールシランに対して触媒量のスズ(II)-キラルジアミンを用いる高エナンチオ選択的不斉アルドール型反応は周知である。しかしながら、エノールシランを用いることなく反応系中で生成させたスズ(II)エノレートに対して触媒量の外部不斉源を用いる本不斉アルドール型反応は、これまでに全く前例のない新規な不斉合成法である。 さらに、アキラルなα-フルオロホスホネートとプロキラルな4-tert-ブチル置換シクロヘキサノンとのHWE(Horner-Wadsworth-Emmons)反応を光学活性プロリンより誘導したキラルジアミンの存在下に行ったところ、最高78%eeのエナンチオ選択性で反応が進行した。本不斉HWE反応においても、上述のアルドール型反応と同様の手法を適用するならば触媒的不斉合成反応への応用展開が可能であると考えられる。 なお、新規な不斉補助剤としてイソマンニドを出発原料とした新規キラルジアミン誘導体の合成にも着手したが、目的化合物を合成するには至らなかった。しかしながら、合成中間体である種々のキラルジオール誘導体を外部不斉源として用いた場合、マグネシウム(II)試薬条件下のアキラルなビスラクチムエーテルとアキラルなアルデヒドとのアルドール型反応において、最高68%eeのエナンチオ選択性が得られることを見いだした。
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