研究概要 |
我々は,既存の方法では打開が困難な「実用性」をキーワードとして,新しいコンセプトに立脚した化学合成法の開発を念頭に現在研究を行っている.中でも,炭素原子の不斉に着目し,効率的な不斉炭素構築法を中心課題として展開中である.現在までに,光学活性な相間移動触媒を用いるエノンの不斉エポキシ化反応,不斉ホーナーエモンズ反応並びに不斉ダルツェンス反応の開発に成功している.これらの反応はいずれも極めて穏和な反応条件で反応が進行し,高いエナンチオ選択性を示すことから,実用性の高い方法論の開発に成功したといえる.何れの反応も既存の方法論では成功例がほとんど知られていなかったものであり,光学活性な相間移動触媒の有用性を十分示しうる結果であると考えられる.また,本方法論の更なる一般性を追及すべく,不斉アルドール反応及び不斉シクロプロパン化反応についても検討中である.いずれも有機合成化学上,困難且つチャレンジングな研究課題であるが,我々が開発した新規相間移動触媒を用いて良好なエナンチオ選択性の実現に成功している.
|