研究概要 |
大腸菌O-157の産生するベロ毒素はヒト28s-rRNAの^<4323>G-^<4324>A-5^<4325>Gユニットからアデニンを解裂する酵素活性を有し,本活性が腸管出血など感染による重篤症状の原因である。 最近著者らは,RNA塩基とRNAの2′-位水酸基に相当する水酸基を側鎖に有するα-L-アミノ酸の酵素的大量合成法を確立した。そこでベロ毒素に対する特異的阻害剤の開発を目標に,これらアミノ酸を用いてG-A-Gコードを持ったペプチド性RNAの合成を検討した。 まず,アデニンならびに2-アミノ-6-クロロプリンをそれぞれα-ブロモアセトアルデヒドジエチルアセタールと反応させ,続く酸加水分解によりアデニルアセトアルデヒドおよびグアニルアセトアルデヒドを得た。著者の開発した酵素的(L-スレオニンアルドラーゼ)アルドール縮合により,これらのアルデヒドとグリシンとを縮合させ,アデニン(A)ならびにグアニン(G)残基を有するβ-ヒドロキシ-α-L-アミノ酸を合成した。次にこれらのアミノ酸のカルボキシル基をベンジル基で保護した後,N-Boc-グリシンとEDCでカップリングさせた。得られた2種のジペプチドを順次交互に,常法に従い縮合させ,最後にN-及びC-末端の脱保護を行って目的のG-A-Gコードを持ったペプチド性RNA(ヘキサペプチド)の合成を達成した。 次年度は,合成したヘキサペプチドがRNA特有のループ構造をとり,ベロ毒素のより優れた阻害剤となるように誘導化し,阻害活性を検討する予定である。
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