研究概要 |
大腸菌O-157の産生するべ口毒素は,ヒト28S r-RNA4324番目のアデノシン残基からアデニンを解裂させるN-グリカナーゼ活性を有するタンパクであるとともに,本活性がベロ毒素による食中毒の原因であることが解明されている。しかし,これら毒素による食中毒に対する有効な治療法は無く,治療薬の開発が急がれている。そこで申請者らは構造一括性相関の視点から,ヒト28S r-RNAの4324番目付近の塩基配列G-A-Gコードを残基に有するペプチド性RNAおよびその誘導体をべ口毒素の阻害剤として合成することを研究目標とした。 申請者らは,まず,核酸塩基をα-位に有するアセトアルデヒド誘導体とグリンシンをL-スレオニンアルドラーゼ(Candida humicola AKU 4586由来)の基質として反応させ,RNA塩基を残基に有するβ-ヒドロキシ-α-アミノ酸の大量合成法を確立した。得られたアミノ酸のβ-位水酸基をRNAのリボース2'-位水酸基に見立てて,これら合成アミノ酸とグリシンとを交互に結合させることによってG-A-Gコードを残基に有するRNA類似のへキサペプチド(ペプチド性RNA)を簡便に合成することに成功した。 合成したペプチド性RNAは,poly(U)-directed polyPhe productionアッセイを指標にμMレベルでべ口毒素を阻害した。
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