研究概要 |
Phomactin類は、福井県沖で採集されたズワイガニの甲殻に寄生する海生菌Phoma sp.の培養液中から見出された強力なPAF拮抗作用を有する一連の海産ジテルペノイドである。Phomactin Aは、天然に唯一見出されたfuranochroman環を有しており、構造化学的に最も注目を集めている化合物である。最近、我々は連続Michael反応によるbicyclo[2.2.2]octane誘導体の合成とその位置選択的な開裂反応を鍵反応とした、phomactin Dの最初の全合成を報告した。そこで、phomactin D全合成の知見をもとに、構造化学的にも生理活性的にも興味深いphomactin Aの効果的合成法の開発を目的に本研究を行った。 本年度は、合成の鍵であるphomactin Aのシクロヘキサン環部の合成法の開発を検討した。入手容易なlevoglucosenoneを出発原料として合成したシリルエノールエーテルとチグリン酸メチルとの分子間Diels-Alder反応によりphomactin Dのシクロヘキサン部に相当する化合物の合成を試みたが、反応は進行せず、原料を回収するのみであった。そこでlevoglucosenoneから分子内にジエンとジエノフィルを有する化合物を合成し、ジクロロベンゼン中200℃に加熱したところ、分子内Diels-Alder反応が進行し、phomactin Dのシクロヘキサン部に相当する化合物が立体選択的に得られた。次いでエステルの選択的な加水分解、還元によりphomactin AのC-7位に相当するメチル基の構築を行った。現在、アセタールの加水分解、1,2-ジオールの酸化的切断を行うことによりphomactin Aのシクロヘキサン環部の合成を検討中である。また、別途合成経路によるphomactin Aの合成も検討中である。
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