研究概要 |
不飽和カルバメート、ウレア、アミドなど両性求核種を有する基質のヨード環化反応は、一般にO-環化体を優先して与えることが知られており、これらの基質に共通してN-環化生成物を得る方法は未だ確立されていなかった。 申請者は、ヨウ素と種々の金属試薬の存在下、上記基質のヨードアミノ環化反応を検討したところ、金属試薬としてn-BuLiやLiAl(Ot-Bu)_4の様なLi系金属試薬を用いると、いずれの基質においても良好な収率でN-環化生成物のみが得られることを見い出した。このLi系金属試薬の効果は注目すべきものであり、例えばN-エトキシカルボニル基を有するN'-アリルウレアや4-ペンテン酸アミドの反応を他の金属試薬[NaH,t-BuOK,Ti(Ot-Bu)_4,Al(Ot-Bu)_3]存在下行っても、O-環化生成物かあるいはO-環化生成物とN-環化生成物の混合物を与えるのみである。本反応は5員環形成反応のみならず、6員環形成反応にも適用可能である。 さらに、本ヨードアミノ環化反応のジアステレオ選択性について検討した結果、ホモアリル位に不斉中心を有するホモアリルカルバメートの反応では高い1,3-cis選択性が、またホモアリルウレアの反応では高いtrans-選択性が観察された。 今後は、塩基性不斉金属触媒を用いるエナンチオ選択的ヨードアミノ環化反応や、塩基性金属試薬による求核部位の活性化を利用した3員環ヨードアミノ環化反応(ヨードアジリジン化反応)などについて検討する予定である。
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