研究概要 |
FR901483はごく最近Cladobotryum属菌代謝物から単離され、in vivoにおいて免疫抑制作用を示し、現在まで知られていなかったユニークなアザトリシクロリングシステムを基本骨格とする化合物である。申請者は本化合物を2年間でキラル全合成する事を目指し、平成9年度において標的化合物の特異なリングシステム、すなわち5-azatricyclo[6.3.1.0^<1,5>]dodecaneの構築法を確立するとともにキラル全合成研究に着手する実施計画に基づき研究を実施し、以下の結果を得た。 初めに2-azabicyclo[3.3.1]nonane (morphan)を含む三環系N,O-アセタールを合成し、これをEt_2AlClによるN,O-アセタールの開裂反応に付すと、アンチブレッドイミニウムイオンが生成し、引き続き各種求核試薬を作用させることによりmorphan骨格1位へのアルキル基導入が達せられた。本法により得られた1-alkylmorphan誘導体を分子内アミノ化反応を経る三環系化合物合成に適用し、FR901483の基本骨格である5-azatricyclo[6.3.1.0^<1,5>]dodecaneの合成法が確立された。以上行ったモデル実験により本全合成計画における基本戦略(morphan骨格構築→三環系骨格構築)の妥当性が確認されたので、標的化合物のキラル全合成に着手し、実施計画に従い、キラルエノンの合成、立体選択的共役付加を経て、標的分子合成の重要中間体となる4連続不斉中心を有するアミノアルコール体の合成を完了した。目下平成10度中のキラル全合成を目指している。
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