研究概要 |
本年度は、DNA二重鎖の高次構造を変化させる側鎖を有するDNA切断化合物として、フェナジンN-オキシド誘導体の分子設計と合成を行なった。S.M.HechtらはアミノアルキルフェナジンN-オキシドが還元剤存在下、活性酸素を発生してDNAを切断することを報告している。しかし、この化合物は構造中N-オキシドがマイナスに荷電している為、マイナス荷電を示すDNAに対しては電気的な反発が生じて親和力が弱い。本研究では、N-オキシドのペリ位に水酸基を導入した1,6-ジヒドロキシフェナジンN-オキシドのアミノアリキル誘導体を新規に合成した。本化合物はN-オキシドが水酸基と水素結合する為、無置換のフェナジンと較べてDNAに対する親和力が増加する。また、水酸基導入によって還元され易くなると、活性酸素生成能が増加してより強力にDNAを切断することが考えられる。本化合物は、Whol-Aue反応によりジヒドロキシフェナジン骨格を合成後、アルキル基を導入して1,6-ジヒドロキシフェナジンアミノアルキル誘導体へと変換し、さらにN-オキシドに酸化して合成した。まず、2-アミノ-5-メチルアニソールと2-ニトロアニソールをWhol-Aue反応により縮合させて1,6-ジメトキシ-3-メチルフェナジンを合成した。3位のメチル基は、NBSを用いてブロム化後、1,3-プロパンジオールを導入した。側鎖末端の水酸基は、Mitunobu反応によりフタルイミドに変換した後、ヨウ化リチウム及びメチルアミンによって脱保護し、1,6-ジヒドロキシフェナジンアミノアルキル誘導体へと導いた。本化合物はさらにアミノ基を保護した後、mCPBAを用いてN-オキシド体へと酸化し、トリフルオロ酢酸によって脱保護して、目的化合物、1,6-ジヒドロキシフェナジンN-オキシドのアミノアルキル誘導体を合成した。水酸基を有していないアミノアルキルフェナジンN-オキシドはHechtらの方法に従って合成した。これらの化合物については、現在DNAに対する相互作用と切断活性について解析中である。
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