研究概要 |
本年度は、DNA二重鎖の高次構造を変化させる側鎖を有するDNA切断化合物として、アミノアルキルフェナジンN-オキシド1と、昨年度、新規に合成したl,6-ジヒドロキシフェナジンN-オキシドのアミノアルキル誘導体2について、DNAに対する相互作用と切断活性について明らかにした。DNAに対する相互作用は、化合物1、-2の酸化還元電位をウシ胸腺DNA存在下で測定することにより解析した。その結果、2の還元ピークの電流値はDNA濃度の増加と共に大きく減少した(27μA→7μA)。また、電位のシフト(-0.42V→-0.46V)も観測された。この結果は、2はDNAと強い親和性を示し、フェナジン骨格がDNAの塩基間にインターカレートしている可能性を示唆している。一方、1は同様の条件下では電流値は僅かに低下したが電位の変化は見られず、DNAとの親和生が弱いことが明らかとなった。次にDNA切断実験をpBR322DNAを用いて還元剤存在下で行なった。その結果、両化合物のDNA切断反応は、好気的条件下、及び嫌気的条件下で進行し、好気的条件下では酸素分子を還元活性化して、一方、嫌気的条件下では分子内N-オキシドの酸素原子を利用して酸素ラジカルを発生し、DNA鎖を切断していることが示された。また、2のDNA切断活性は1と較べて非常に強く、この活性の強さは、DNAに対する強力な親和性に由来していることが考えられた。以上、1のDNAに対する親和性を増加させる目的で新規に合成した、l,6-ジヒドロキシフェナジンN-オキシドのアミノアルキル誘導体2が、好気的及び嫌気的条件下で強力なDNA切断活性を示したことは、本化合物が、固形腫瘍に対して有効な抗癌剤としてのリード化合物として有効であることが明らかとなった。
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