過剰量の様々な栄養物質により活性化する抗癌剤排出ポンプ:申請者は、高度好塩菌の一種、Haloferax volcaniiにおいて、抗癌剤を含む培地で培養しなくても、過剰量のグルコース、アミノ酸、アルコール存在下での培養により抗癌剤排出ポンプが誘導されてくることを明きらかにした。この活性化にはこれらの代謝が必須であることが明らかにした。通常の培地で培養した場合でも、少ないながら排出活性が観察された。更に、これら誘導されてくる排出ポンプが同一であるか否かについて検討をおこなった。これら誘導されてくるポンプのエネルギー系はATPの加水分解であった。一方、ATP依存性は、抗癌剤により誘導されてくるポンプと過剰量アミノ酸により誘導されてくるものと同じであたったが、糖による誘導は異なっていた。このことにより、過剰量の糖により誘導されてくる排出ポンプは、抗癌剤あるいは過剰量アミノ酸により誘導されてくるものと異なることが示唆された。また、抗癌剤により誘導される排出ポンプ、過剰量グルコースにより誘導されるもの、内在的に存在するものは、基質特異性、阻害剤による阻害曲線が異なるという結果も得られており、いくつもの排出ポンプが存在すると推察された。現在、これら排出ポンプの分子種のシークエンスを行っている。 P-糖蛋白類似排出ポンプの遺伝子クローニング:抗癌剤、アミノ酸、及びグルコースにより誘導されてくる排出輸送担体は性質が少しずつことなるが、どの輸送担体もATP依存的であり、ATP binding cassette (ABC)を有していると予想される。ABCの一部であるB-motifの保存配列をprimerとしてPCRをかけ、0.6kbpの産物が得られた。このPCR産物は、排出輸送担体の一部であると考えられる。このシークエンスを行った。その中から、ヒトMDRに相同性の高いPCR断片をクローン化し、これをプロープとしてゲノムライブラリーから新規のATP駆動型輸送担体の遺伝子を単離した。この輸送担体遺伝子は、274アミノ酸残基からなるABC蛋白と401アミノ酸残基からなる膜貫蛋白をそれぞれコードする遺伝子がオペロンを形成していた。これより、この輸送担体は両者が2量体を形成して機能するものであろうと推定している。また、ABC部分は、様々な動物細胞におけるMDRと極めて相同性が高いものであった。現在、大腸菌に於ける機能発現及びH.volcaniiにおける欠損株を作成し、機能を解析中である。
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