前年度に引き続き、肝疾患治療薬としての開発が期待されている肝細胞増殖因子(HGF)、貧血治療薬として既に臨床応用のなされているエリスロポエチン(EPO)について検討を行った。・前年度に構築したHGFの新規デリバリーシステムであるプロタミン前投与のメカニズム解析を試みたところ、以下のことが明かとなった。(1)プロタミンは主にHGFの低親和性クリアランス部位を阻害すること、(ii)プロタミンによる効果には前処理に10分程度の時間が必要であること、(iii)プロタミンによるHGF作用に対する直接効果はHGFレセプターリン酸化を介すること。以上の知見は本システムを臨床応用する際の重要な知見であると考える。特に(ii)の知見は、投与スケジュールなどを決定する際に考慮すべき情報である。プロタミンによる作用がプロタミンとHGFクリアランス部位(ヘパラン硫酸)ないしHGFレセプターとの相互作用によるものなのか、プロタミン自身にもレセプターが存在するのかについてはなお不明であり、メカニズム解明にはさらなる検討が必要である。EPOについてはクリアランス機構の解明を前年度に引き続き試みたところ、標的細胞のmigrationならびに増殖がEPOによるクリアランスのupregulationのメカニズムであることが明かとなった。EPOの頻回投与によってcolony formingunit erythroid(CFU-E)の前駆細胞であるBFU-Eの脾臓へのmigrationが促進され、脾臓に接着したBFU-EがCFU-Eに分化増殖することによって脾臓あたりのCFU-E数の増加が起こり、結果としてレセプター介在性エンドサイトーシスの促進によるEPOクリアランスの増加が起こることが証明された。これはEPO投与によるEPO自身の血中レベル調節機構として重要であると考えられる。
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