研究概要 |
本年度は,LC/MSを用いてイオン化の至適条件等を明らかとし,LC/MS/MS分析への布石とした. 以下にその結果を示す. 1.先に合成したビタミンD(D)及び25-ヒドロキシビタミンD〔25(OH)D〕のモノグルクロニド〔D3-glucuronide(D3G),25(OH)D3G,25(OH)D25G〕を標品として,LC/MSの大気圧化学イオン化法(APCI)又はエレクトロスプレーイオン化法(ESI)における検出条件を精査した. その結果,ESIではイオンの生成は認められなかったが,負イオン検出APCIにおいてDのモノグルクロニドの擬分子イオン〔M-H〕^-が基準ピークとして明瞭に観察された. 一方,正イオンモードではモノグルクロニドを検出することはできなかったが,メチルエステルに誘導体化しAcONH_4を添加した移動相を使用したところ〔M+NH_4〕^+が基準ピークとして観察された. 2.上述のLC/MSを用いて,D_2又は25(OH)D_2投与後の胆管ろうラット胆汁中に各々のモノグルクロニドが存在することを明らかとした. すなわち,採取した胆汁に前処理を施し,得られたグルクロニド画分を負イオン検出LC/APCI-MS,又はメチルエステル化後正イオン検出LC/APCI-MSに付し,マススペクトル及び選択イオン検出によりモノグルクロニドを確認した. 3.25(OH)D_3又はそのプロ体を基質に,ラット肝ミクロソーム画分を酵素原に使用するin vitroでのグルクロニデーションにおいて,いずれの基質からもin vivoのそれと同様に3Gのみならず3級水酸基への抱合体である25Gが生成することをLC/MSにより確認した. 以上のLC/MSによる同定は,簡便で信頼性に富むものであるが,さらにLC/MS/MSにより擬分子イオンなど(プレカーサーイオン)を開裂させ,特徴的ピークを検出するならば,より一層の高感度化がなされるものと期待される.
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